
「玄関を作り変えて、希望の持てる家にしてほしい」
この住まいの改修は、このような嬉しくも身の引き締まるご依頼からはじまりました。 クライアントのご夫婦は、お会いした当時、旦那さん80歳、奥さん71歳。今までずっと東京で暮らしていましたが心機一転、新たな生活を始めるため、山梨県北杜市に移住することを決意されました。

新たな住まいとなる建物は、もともと旦那さんが会社の保養所としてつくられたもの。
とても景色の美しい場所にあります。
改修を依頼されたのは玄関のみ。
「玄関があまり好きではないのです。」とおっしゃっていた旦那さん。
決して悪い玄関ではないのですが、少し薄暗く、部屋同士を分断している感じがありました。

ただ、玄関をつくり変えるだけで、果たして『希望の持てる空間』は作れるのだろうか?と、しばらく考えあぐねていました。
しかしもう一度訪れたとき、その場で景色を見ながらスケッチをしていたら、なぜかすっと最終的な空間の原型となるプランができました。

玄関は内部と外部を繋げる為の緩衝空間です。
この場所を変えることで、居間と玄関の関係性、玄関と外部の関係性。さらには、居間と外部の関係のすべてを変化させられないかと考えました。
そう考えたのです。


2階から少し下がるように(セットバック)して作られていた1階の一部を増築。その部分と既存の玄関部分を繋げる形で少し広い土間空間をつくりました。
窓は景色を切り取る形で連続水平窓を配置。絵画のように景色を切り取るために、枠を見せないような納まりとしました。
一番左側の窓は換気のため、開け閉めできるように縦滑り出し窓としています。

土間は大谷石を使用。やわらかなで豊かな表情を空間に加えてくれています。
この土間になった部分の中央に柱がありましたが、これを撤去し梁をかけることによって補強をしました。


照明は既存の空間との調和を考え、アンティークのものと作家が作ったものをバランスよく、ひとつひとつセレクトして取り付けしています。

出来上がった土間空間は、居間からの景色、外部からの出入りの体験、それらを大きく変えてくれました。
「玄関を改装してくださいとお願いしたのに、玄関がなくなっちゃいましたね。」 笑いながら満足そうに、そう話してくださったご夫婦。「本当に希望の持てる家になりました。」
嬉しい言葉をいただけて、私はほっと胸を撫でおろしたのでした。

下の写真は改修前の外観です

Date : 2024
Location : Hokuto-City , Yamanashi
Builder : Ishikawa Koumuten
Photo : Misaki Kume