テノナル工藝百職

tenonaru kougei hyakusyoku

Category : Shop Renovation

CONCEPT

長く京都で暮らしを彩る手しごとの器や道具を扱ってきた店、テノナル工藝百職。2020年神戸に移転した際のリノベーションプロジェクトです。

リノベーションしたのは、神戸北野のひっそりとした路地裏にある築100年以上の長屋。
以前の改装により外部は黒く塗装され窓はアルミサッシに。内装は所謂和モダンと言えば聞こえはいいのだろうが、古い建物の良さを活かせていない中途半端な印象でした。

ここで、京都のテノナル工藝百職でついて私が受けた印象を説明しなければなりません。
テノナル工藝百職は作家による手しごとで丁寧に一点一点つくられた器や道具を扱うお店。同じ種類の商品でもひとつひとつ表情が異なり、そこにはつくり手の想いが宿っています。
クライアントである店主の渡邊さんはそれらを作家から受け取り手へと、丁寧に時間をかけて対話を重ね、繋いでいきます。 その中でけして繕ってよく見せるようなことはしません。ただそこにある魅力を、本質を伝えて、それに心を動かされた人が購入し、暮らしの一部になっていく。

今回リノベーションをお受けし、対話を重ねていく中で、「本質を隠して、綺麗に化粧をするようなことはしてはいけない」という想いが確固たるものとなっていきました。

所謂古民家のリノベーションの手法として、天井などの躯体を現しにして、壁は綺麗に内側に石膏ボードやベニアを貼って塗装する、と言う手法が多く見られますが、それはこの店には相応しくないと感じました。
そこからコンセプトは、自然と決まりました。
100年以上の歴史を持つ長屋の本質を、丁寧に対話しながらを取り戻していくこと、と。

解体工事

まずは今回の主軸となる解体です。
解体は施主と、その友人や作家さんによるセルフ工事で行いました。
解体と言う前工事の作業ではありますが、化粧を施さない工事のため、ほぼこれで空間の特性は決まります。
天井を剥がし、垂れ壁や飾り棚等を撤去し、柱や長押、建具枠などに厚く塗られたペンキを少しずつ削りとっていく。
この長屋にとって、何処が本質であるのか、建物の声に耳を傾け、慎重に確認をしながら要素をひとつひとつ減じていきました。
とても手間のかかる作業でしたが、みなさんの協力によって完了することができました。

内装工事

建物の2階部分が住居であるため、住居と店舗を行き来するための動線をスムーズに行き来できるように計画。かつ、訪れる方にそれを感じさせないように目立たないように設計しました。
また、解体で露わになった要素の複雑性を受け止められるように空間構成は極力シンプルなものとしました。
床の材料は、縁あって譲り受けた山梨で廃校となった小学校の床下地板を再利用。壁仕上げはクライアントと相談を重ね、芦沼石の粉をブレンドした漆喰を使いました。この粉は益子焼に多く使われる釉薬の原料で、それらの器が配されるこの場所にしっくり馴染むことを期待しました。通常より少しグレーがかった色味の漆喰が塗られた壁は、空間の空気を一段静かにしてくれています。

外装工事
店舗入り口は元々リビングだった部分のアルミサッシを木製に変更。また、前庭の部分を店舗の床と同程度のレベルまでデッキを用いて上げることで、アプローチと中庭を兼ねた中間領域として活用できるようにしました。これは元来日本の民家が持っていた、内と外を繋ぐ曖昧な空間であり、ここを訪れる人の心のバッファとなることを期待しています。
夜にはコーナーに配されたペンダントライトがアプローチを優しく照らしてくれます。このペンダントライトは、漁船が夜に漁をする際に吊り下げるソケットの小さいものを、アレンジして取り付けしています。

多くの人の力添えによりこの空間をつくりあげることができました。
素材やデザインの力を超えてひとつひとつの想いが本質である。
心からそう感じられたプロジェクトでした。

長く京都で暮らしを彩る手しごとの器や道具を扱ってきた店、テノナル工藝百職。2020年神戸に移転した際のリノベーションプロジェクトです。

リノベーションしたのは、神戸北野のひっそりとした路地裏にある築100年以上の長屋。
以前の改装により外部は黒く塗装され窓はアルミサッシに。内装は所謂和モダンと言えば聞こえはいいのだろうが、古い建物の良さを活かせていない中途半端な印象でした。

ここで、京都のテノナル工藝百職でついて私が受けた印象を説明しなければなりません。
テノナル工藝百職は作家による手しごとで丁寧に一点一点つくられた器や道具を扱うお店。同じ種類の商品でもひとつひとつ表情が異なり、そこにはつくり手の想いが宿っています。
クライアントである店主の渡邊さんはそれらを作家から受け取り手へと、丁寧に時間をかけて対話を重ね、繋いでいきます。 その中でけして繕ってよく見せるようなことはしません。ただそこにある魅力を、本質を伝えて、それに心を動かされた人が購入し、暮らしの一部になっていく。

今回リノベーションをお受けし、対話を重ねていく中で、「本質を隠して、綺麗に化粧をするようなことはしてはいけない」という想いが確固たるものとなっていきました。

所謂古民家のリノベーションの手法として、天井などの躯体を現しにして、壁は綺麗に内側に石膏ボードやベニアを貼って塗装する、と言う手法が多く見られますが、それはこの店には相応しくないと感じました。
そこからコンセプトは、自然と決まりました。
100年以上の歴史を持つ長屋の本質を、丁寧に対話しながらを取り戻していくこと、と。

解体工事

まずは今回の主軸となる解体です。
解体は施主と、その友人や作家さんによるセルフ工事で行いました。
解体と言う前工事の作業ではありますが、化粧を施さない工事のため、ほぼこれで空間の特性は決まります。
天井を剥がし、垂れ壁や飾り棚等を撤去し、柱や長押、建具枠などに厚く塗られたペンキを少しずつ削りとっていく。
この長屋にとって、何処が本質であるのか、建物の声に耳を傾け、慎重に確認をしながら要素をひとつひとつ減じていきました。
とても手間のかかる作業でしたが、みなさんの協力によって完了することができました。

内装工事

建物の2階部分が住居であるため、住居と店舗を行き来するための動線をスムーズに行き来できるように計画。かつ、訪れる方にそれを感じさせないように目立たないように設計しました。
また、解体で露わになった要素の複雑性を受け止められるように空間構成は極力シンプルなものとしました。
床の材料は、縁あって譲り受けた山梨で廃校となった小学校の床下地板を再利用。壁仕上げはクライアントと相談を重ね、芦沼石の粉をブレンドした漆喰を使いました。この粉は益子焼に多く使われる釉薬の原料で、それらの器が配されるこの場所にしっくり馴染むことを期待しました。通常より少しグレーがかった色味の漆喰が塗られた壁は、空間の空気を一段静かにしてくれています。

外装工事
店舗入り口は元々リビングだった部分のアルミサッシを木製に変更。また、前庭の部分を店舗の床と同程度のレベルまでデッキを用いて上げることで、アプローチと中庭を兼ねた中間領域として活用できるようにしました。これは元来日本の民家が持っていた、内と外を繋ぐ曖昧な空間であり、ここを訪れる人の心のバッファとなることを期待しています。
夜にはコーナーに配されたペンダントライトがアプローチを優しく照らしてくれます。このペンダントライトは、漁船が夜に漁をする際に吊り下げるソケットの小さいものを、アレンジして取り付けしています。

多くの人の力添えによりこの空間をつくりあげることができました。
素材やデザインの力を超えてひとつひとつの想いが本質である。
心からそう感じられたプロジェクトでした。

Date: October 2020
Location: Kobe-city , Hyogo
Builder: Yamazaki kenchiku sekkei jimusyo
Carpenter: Hirano koumuten
Plasterer: Hashida sakanten
Wood door: Osada kogei
Electrical installation: Ohashi denki shokai
Water supply & drainage: Oya setsubi
Hardware: Iwai kanamono
Photo: Akihiro Yamaguchi